Summer Exchange Research Program(SERP) アーヘン工科大学 2022 年 09 月~2023年 03 月
留学時の学年: |
修士2年 |
---|---|
東工大での所属: |
工学院 電気電子系 |
留学先国: |
ドイツ連邦共和国 |
留学先大学: |
アーヘン工科大学 |
留学期間: |
2022年9月28日 ~2023年3月29日 |
プログラム名: |
1. 派遣先大学の概要(所在地、創立、規模など)
アーヘン工科大学は、ドイツの中部西端、ベルギーとオランダと国境をなす街アーヘンに位置する大学です。古来アーヘンは大聖堂を中心とした円形城郭都市で、今もその名残が道路や城門からうかがえます。また、人口25万人の内、5分の1を学生が占めるといわれる学生の街です。アーヘン工科大学関連の施設は中心地の北部から西部にかけて多く存在し、一つの広大なキャンパスを持つというよりも街なかに学部棟、研究機関が点在しています。
47,000人の学生の内、28%, 13,000人の留学生がおり、出身国別割合はインド、中国、中東諸国、ヨーロッパ周辺諸国、韓国の順に多い印象です。ドイツの研究支援制度であるエクセレンスイニシアティブとTU9に採択されていることや、産学連携が活発である等の理由から、日本に比べて多くの有給な博士課程学生が在籍していると感じました。また、工科大学ながらも、経営学部や医学部も併せ持つ総合大学のような一面があります。
留学準備など
初めに大まかな時系列で紹介すると、3, 4月にホスト研究室探し・受け入れ許可取得、5月に必要書類を用意してSERPに応募、8月にアーヘン工科大学のenrollment、寮、ドイツ保険の手続き、9月にVISAの申請・航空券の確保をしました。
東工大には留学プログラムが複数用意されていますが、ある程度の長期的な滞在と海外での研究活動を行ってみたかったのでSERPの秋派遣枠に応募しました。SERPのメリットの一つは英語要件をTOEICで満たせることで、追加で英語試験を受ける必要がないので応募がしやすいです。一方ホスト研究室については、希望大学によっては自身で受け入れ許可を事前に得る必要があり大変でした。ドイツでは博士課程の学生が基本的に面倒を見てくれるので初めのメールは希望研究室・テーマを扱っている博士の方にメールを送ると返信がもらいやすくなるかもしれません。学内選考を経てプログラムに採択された後はホスト大学の留学担当者の方からのメールを待ち、いずれenrollment申請の連絡が届きます。ドイツに3か月以上滞在する場合はVISA取得が必須で(入国後でも可能)、そのためには保険の加入やenrollmentも必要になります。その後寮についての案内が来ますが、アーヘンは慢性的な住宅不足のため寮には入れるかは抽選次第です。また、連絡がギリギリなので前もってダメだった時用にWohngemeinschaft等でシェアハウスについて調べておいた方がいいかもしれません。私の場合は9月に運よく入寮の知らせが届きました。最後にVISAについて、日本人はドイツ入国後に取得することが推奨されていますが在日ドイツ大使館でも事前に申請できます。ただ、コロナ渦では来館予約、VISA取得にそれぞれ1か月ほどかかり生活費証明の海外送金にも時間がかかることを考慮しなければならなかったです。私の場合は結局書類まで準備して来館したもののVISA給付が搭乗日に間に合いそうになかったためドイツ到着後に申請しました。もちろんドイツでの住民登録やVISA申請も事前予約が必要かつ中々予約が取れないので粘り強さが必要です。
所属研究室での研究概要とその経過や成果、課題など
電力反射板を活用した同時無線情報・電力伝送通信の消費電力低減をテーマにMATLABでシミュレーションを行いました。電源につながれていない複数センサとひとつのアクセスポイント(AP)が配備された工場を対象とし、各センサはAPから情報や電力を受けとり、反対に貯蓄した電力を用いてAPに向けて情報を返信したりします。そこで、センサの送受信時間、APと反射板のビームフォーミング、センサの送信電力を順次最適化してAPの送信エネルギーを最小化することを目指しました。課題は、理論的なダイオード非線形電力貯蓄モデルを取り入れることで、そのままの形では制約式を満たさないので、最適化に向けて計算を繰り返す過程で逐次テイラー近似して定数とみなすことで対処しました。
渡航前に興味のある研究内容を伝えておいたのでテーマ選択はスムーズでした。初めの二か月半で先行研究を再現しつつ凸最適化を学び、残りの三か月ほどで自身のテーマに取り組み、反射板を置くことでAP送信エネルギーを最小化できることを示しました。博士学生の方と週一回の定期ミーティングを設けて、進捗や方向性について話し合いつつ研究を進めました。また、適宜居室を訪ねてわからないことも丁寧に教えて頂けました。初めのうちは自分の疑問点を英語化して伝えることも、返答を理解することも大変で何回も聞き返していましたが、次第にスムーズにコミュニケーションが取れるようになったときはうれしかったです。
所属研究室内外の活動・体験(日常生活・余暇に行った事など)
私の所属した研究室では14名のポスドク、博士学生がモバイル通信や凸最適化、機械学習の研究をしており、その下に修士、学士が全体で二名だけいました。ドイツでは修士であっても、学位論文を書くための六か月間のみ研究室に所属するらしく教育制度の違いに驚きました。また、一度就職してから修士、博士で学んでいる人も多く、年齢が違う同士でも一緒に昼食を囲んでフランクにおしゃべりするのは新鮮な体験でした。
基本的な平日の流れとしては、朝10時ごろに登校して途中学食で昼食をとり、18時過ぎにスーパーに寄って寮に帰り自炊する生活をおくっていました。余暇の時間は、もっと周りの人と英語で話せるようになりたかったのでアメリカドラマを見て使えそうなフレーズを学んだり、交流会に参加したりしました。交流会で出会った友達とは、一緒にクリスマスマーケットを見に行ったり、ワールドカップを見たり、料理を作ったり、ライブを見に行ったり、アウトバーンを運転したりと、おかげでたくさんの楽しい思い出ができました。彼らと過ごすと、そんなフレーズやリアクションをするんだと生きた英会話の学びにもなりました。いつしかあのように顔の動きで感情を豊かに表現できたらなと思っています(笑)。
週末になると、セメスターチケットを使ってNRW州内を日帰り旅行したり、フリックスバスやLCCを利用してヨーロッパ内をよく観光したりしました。歴史的な建造物や街並み、博物館、食事、公共交通機関などどれも日本とは異なる点が多くて、そこを事前調査や実際に目で見て体感することで自分の中の常識が広がる感じがして面白かったです。
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図1. グリューワインで乾杯@クリスマスマーケット
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留学先での住居(寮、ホームステイ等)、申し込み方法、ルームメイトなど
市内中心部からやや外れた大学病院近くで、300人規模の寮に割り当てられました。十分な部屋の広さと充実した設備(洗濯・乾燥機、コピー機、サウナ、卓球台、ネットワーク、共用の調理器具等)、多くのバス路線が走り、徒歩圏内にスーパーマーケットもある、と非常に良い寮でした。しいて残念な点を挙げるとすれば、エネルギー危機で暖房が弱かったことと、1フラット7名でキッチンとシャワー、トイレを共同利用するのでキッチンは同時に3人まで、シャワー・トイレは一人ずつしか使えなかったことです。それでもキッチン共有寮に申し込んで正解でした。キッチンは皆が行き来するコミュニティスペースとなるので、自然と会話や料理のシェアが起こり仲良くなれます。私のルームメイトはインド人3人、トルコ人2人、ドイツ人1人で、特にインド人は頻繁にカレーやチャイ、タンドリーチキンをくれる方々で本当によくしてもらいました。
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図 2. うどん作り@ドミトリー
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留学費用(渡航費、生活費、住居費、保険料)など
コロナの影響でインフレや円高が生じて想定よりも費用がかさみました。ドイツではVISA取得時にユーロ建てで滞在期間中の生活資金の証明をしなければならず、私は運悪く1€≒145円時に換金したことも影響しています。食堂以外の外食は高いので、基本自炊をすることで旅行に向けて節約していました。
今回の留学から得られたもの、後輩へのメッセージ、感想、意見、要望
長期的に生活する中で障壁となったのはやはり、「言語の問題」と「些細なことからルールが異なること」です。生の会話はリスニング教材と違って、人による癖や雑音が加わっているし、応答速度も大事です。また、私の初めの難関はただコピー機を探すことでした。
最初はいろいろと戸惑うことがありますが、その度に何とか対処しようと自分なりに調べ行動する力が留学を通して一番向上したと感じています。そして、たいていの問題はどうにかなると余裕も持てるようになりました。一旦慣れると、むしろルールの違いから国柄や歴史を感じることができて楽しかったです。日本の外に出て暮らしてみることで、常識だとか何が当たり前の考え方なのかは場所によって大きく異なることを身に染みて感じました。そうしていろいろな考えに触れて、今一度日本の好きな点、もっとドイツみたいになったらいいなという点を見つけられたのはいい経験です。
コロナ前後でモノの値段と各種申請手続き方法(住民登録、VISA予約必須等)が変化していると感じました。注意してください。
この体験談の留学・国際経験プログラム情報
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