派遣交換留学 ボローニャ大学 2025年2月14日~2025年8月13日

派遣交換留学 ボローニャ大学 2025年2月14日~2025年8月13日

留学時の学年:
修士課程2年
所属:
環境・社会理工学院 建築学系・建築学コース
留学先国:
イタリア共和国
留学先大学:
ボローニャ大学
留学期間:
2025年2月14日~2025年8月13日
プログラム名:

留学先大学(期間)の概略

ボローニャ大学は、エミリア・ロマーニャ州の州都ボローニャに本拠地を構え、イタリアでは珍しく州全域にキャンパスが点在している総合大学です。近代型の大学として最も歴史が古く、その前身は校章に見られるように1088年であるといいます。その歴史の長さから著名人も多く輩出しており、現在もボローニャは学生も多く暮らす街となっています。

留学前の準備

就職活動、修士・博士論文などとの兼ね合いを含め、修了までの計画をどう立てたか。

私が留学準備に本腰を入れたのは修士1年目の終盤で、入学当初は2年で卒業する履修計画を立てていました。留学と就職活動、卒業の延期などを逆算しながら、どうにか半年分の申請に間に合う時期に必要な語学スコアを取得することができました。
修士1年目と出発前はインターンシップ等の就職活動をしていましたが、出発と希望業界の就職開始時期と重なったため、帰国後に正式に就職活動をすることになりました。

帰国当日の朝、中央のマッジョーレ広場とサン・ペトローニオ聖堂

帰国当日の朝、中央のマッジョーレ広場とサン・ペトローニオ聖堂

留学情報の入手方法、専門分野・語学の準備方法、ビザ取得方法、住居の探し方など。

私は申請できる2期目のタイミングで派遣交換留学を申請したため、応募枠の残った学校の中から「受講したい授業があるかどうか」に注目してシラバスを読み込みました。研究室に来ていた留学生との交流の影響は大きく、また結果として同期8人全員が留学を経験したという特殊な環境にも、モチベーションの維持を支えてもらったと思います。
ボローニャに行けると決まった後、留学準備期間で最も困難だったのは「住居探し」と「ビザの申請」でした。
イタリアのビザの申請には住所や住宅の契約書の提示が求められていたので、約半年前から不動産サイトをチェックし続けました。ボローニャ大学の学生寮に入寮できるのは学位取得の正規留学生のみで、交換留学生は一般的な仲介会社かボローニャ大学が出資した不動産サイトを通じて契約を勝ち取らなくてはなりませんでした。家賃予算と合う良い物件が見つからずに焦る日々が続きましたが、出発の1か月半前にようやく住居を契約することができました。契約が決まらない状況に甘えて大使館の予約を後回しにしたため、渡航当日の朝に留学ビザを大使館へ受け取りに行くことになりました。

留学中の勉学・研究

ボローニャ大学の留学生には、日本でいう研究室(ゼミ)所属制度がなく、授業に参加する形式のみでした。授業は複数授業をまとめて評価するコース型と、個別に評価される選択科目型があります。私は前者の英語コースから2つの授業を履修しました。デザインスタジオでの班分けは初日に学生同士で自由に組む方式であり、日本のようにシステマチックにも交流を得られると思っていたので驚きました。
ボローニャ市内の貨物輸送施設跡地を対象としたエリア再開発の課題で、4人のチームを組みました。各学生が取得しなければならない単位数の違いから、それぞれが独自に案を進める週もあり、進捗共有やフィードバックが次の週までできないこともありました。それによって議論が空転することもありましたが、最終的にはそれぞれの案を統合し、満足のいくプレゼンテーションで終えることができたと思います。

チームメイトとの最終プレゼンの様子

チームメイトとの最終プレゼンの様子

留学先での語学状況

申請できる語学試験のスコアをちょうどで獲得したので、当然最初の1,2か月は慣れるのに時間を要しました。日本人が日本語に寄った英語を話すようにイタリア訛りの英語を話す先生もいれば、先生や学生を問わず堪能な方が日本よりたくさんいます。英語コースに後期から参加したため既に友人の輪ができあがっていたことも含めて、不安を覚える場面が多々ありました。
イタリア語は動画共有サイトを利用して勉強し、最終的に定型のやり取りはできるようになって、国内を旅行するのがとても楽しくなりました。若い人、特に北イタリアや観光地になると英語が話せる人が多くいましたが、お年寄りや南イタリアに行くと英語が伝わらない場面もありました。レストランで頑張ってイタリア語で注文した帰りに、お店のおじさんが笑顔で「ありがとう」と言ってくれた経験は忘れられません。

ミラノにある憧れの建築家による広場

ミラノにある憧れの建築家による広場

留学中に行った勉学・研究以外の活動

留学期間中は、プレゼンテーション前の忙しい時期を除き、多くの旅行を安価に計画して回りました。同期や後輩、友人が同時期に各国へ留学していたことに助けられ、その人が住まう都市や周辺をたくさん巡りました。彼らがボローニャに来てくれた時には案内するなど、日本人同士でも体験を共有できたことは楽しい時間でした。
イタリア国内を旅行をして印象的だった都市とその生活文化を2つ紹介します。
まず一つは、運河で知られるヴェネチアです。ヴェネチア本島主要部には車道がないため、観光用のゴンドラ以外にも、バスやタクシー、警察や救急といった移動手段はすべて船(ヴァポレット)が担っていました。そのなかで偶然出会うことができたのは、ごみ収集を行う船です。どのように処分しているか想像したこともなかったので、クレーンで船内へごみを積み込む光景に思わず興奮しました。
もう一つは、北西部の都市トリノです。街の建物は基本的にイタリアらしい窓(日除け)を備えていますが、屋根に目を向けるとフランス風に煙突が列を成して並んでいるものもありました。歴史と地理が建物の形に深く関わっていることが見て取れ、パリ旅行で目にしていた街の特徴に気づけたことをとても嬉しく思いました。
また、イタリアは各地に伝統料理や多様な形のパスタ、地域のワインがあり、どこを旅行しても美味しい文化に出会う体験ができます。いつでもどこでも知りたい情報にアクセスできる現代にはその良さがありつつも、本物を体験できることの尊さを有難く思う機会になりました。

ヴェネチアのごみ収集船
ヴェネチアのごみ収集船

フランスとイタリアの文化が混ざるトリノの建築
フランスとイタリアの文化が混ざるトリノの建築

ボローニャFCが51年ぶりに優勝した。老若男女問わず喜びを分かち合ってお祭り騒ぎな23時の広場。
ボローニャFCが51年ぶりに優勝した。老若男女問わず喜びを分かち合ってお祭り騒ぎな23時の広場。

徒歩15分でサッカースタジアムのある暮らし。街全体に愛される文化としてのサッカーを肌で感じた。
徒歩15分でサッカースタジアムのある暮らし。街全体に愛される文化としてのサッカーを肌で感じた。

留学先での住居

私が暮らしたのは集合住宅の一室で、大家さんと彼のペットの猫二匹がルームメイトでした。ホームステイと呼べる環境で、毎日会話する人が一緒にいたのはとても心強かったです。大家さんは晩御飯を近所に暮らすご家族と食べて帰ってくるので、キッチンは自由に使わせてくれました。到着後すぐは乾燥パスタをストックしてくれていたり、学生には手が出にくい高価な果物やチーズを分けてくれたり、私が日本食を作れば夕食からの帰宅後でも味見をしてくれたりと、とても寛大な方でした。イタリア人が家庭で作るカルボナーラや、ラグー(ボローニャ発祥のボロネーゼにかける肉煮込み)を教えてくれたり、街中を散歩して案内してくれたりと、大家さんのおかげで充実した文化体験ができました。半年の留学を通して大家さんは最も深く関わったイタリア人であり、私にとってはイタリア人の父親かのようで、感謝してもしきれません。

留学を終えて、自分自身の成長を実感したエピソード

留学中は語学への不安やコンプレックスを常に抱えており、渡航前と比べて上達した実感を持つことはできませんでした。しかし帰国後、所属研究室に来ていた留学生と英語で会話した際に、
渡航前よりも円滑にコミュニケーションがとれていることに気づきました。語彙が豊かでないなりに、言いたいことを伝えられるようになってきたのだと思います。
また、本学にはさまざまな国から留学生が来ていますが、英語が主要言語ではない日本で暮らし、さらに学問に励む彼らを改めて尊敬するようになりました。
そして、「日本で日本人の男性として生まれ育った」という、自分が無意識に享受していた立場から離れて暮らせたことも大きな経験でした。普段と異なる立場や少数派として暮らす時間こそ、留学の本質なのだと思います。他人になることはできませんが、相手の立場に寄り添おうとする姿勢の大切さを改めて学びました。出自にかかわらず優しい人もいればそうでない人もいるという現実で、自分はどう生きたいかを考える時間を得られたことは、大きな成長に繋がったと思います。

馴染みある人も多いであろう港町、ポルトフィーノ。旅行で目的地にするには難易度の高い場所にも多く訪れた。

馴染みある人も多いであろう港町、ポルトフィーノ。旅行で目的地にするには難易度の高い場所にも多く訪れた。

留学費用

留学費用総額 約200万円 (Jasso給付奨学金込)
奨学金 約80万円 (渡航補助費、金額変動を含む)                         
渡航費 往復28万円 (帰国時預入容量限度に課金)
家賃 €550≒9万円/月 (光熱費等込み)
保険料 6万円
食費 1.5-2万円/月
その他 生活費、旅費

留学を希望する後輩へアドバイス

留学の最大の魅力は、旅行とは異なる時間の単位で「本物」を体験できることにあります。教科書やインターネットで知っていた建築や都市を、実際に自分の身体で感じること自体が大きな学びでした。
また、留学中は自分のために使える時間が格段に増えます。日本にいれば避けられない研究室の仕事やアルバイトから解放され、各地を旅行したり研究に没頭したりと、自由に選べる時間がありました。自分と向き合う機会を持てたことも貴重です。もちろん、周囲の理解や金銭面で苦労する場面はありますが、チャンスがあるなら掴みに行くべきだと思います。

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